真言宗の瞑想【()()(かん)

★【阿字観】とは

真言宗の開祖、弘法大師(こうぼうだいし)が伝えた修行法に観法(かんぼう)があり、【阿字観】その一つです

阿字観は真言密教の座禅による瞑想法で(真言(しんごん)(ぜん))とも言います。

 

 ★阿字観は観法の基本で、簡単に誰でも苦痛を伴わず自分の心を見つめる事が出来る真言宗の瞑想法。昔は真言僧侶の心身の鍛練として基本となる瞑想修行でしたが、その修行方法が苦痛を伴わず、身体と呼吸と心を整える事で安心(あんじん)を得られる修行であるゆえ、その後、一般の人々も気軽にできる瞑想の修行(観法)となりました。

 

★阿字観の「阿」はインド古語(梵語(ぼんご))「ア」で、アの文字ですべての根源、宇宙の真理の象徴を顕し、さらにこれを真言密教では命の本源を体現する仏様として大日如来(だいにちにょらい)を表します。

・命の誕生の時、初めに発する言葉(オギャーア)阿(ア)の発声 臨終(ウン)

・「ア」は梵語50文字の初め、文字の根源

・「ア」の一字に一切の声、一切の文字、一切の万物が包み込まれています。

 

 

*大日如来 真言宗の本尊であり宇宙の本質と心理を体現化した仏。全ての仏(如来、菩薩、明王、天部)は大日如来の化身(けしん)(姿を変えたもの)でそれらの徳も大日如来が発したものである。山川(さんせん)草木(そうもく)、動物、人間、神仏、全てに宿る「こころ」いのちは大日如来の「こころ」と「いのち」のあらわれで全てが通じ合い平等また不生(ふしょう)不滅(ふめつ)(作られたものは壊れ生まれたものは死ぬ、しかし生まれる以前のものは壊れる事も死ぬこともない)我々の命は生まれて死ぬのではなく、元宇宙の中の命の一つであり大日如来のと我々の命は一つである

インドではマカビルシャナ如来と言う。マカ=大きい ビルシャナ=遍く照らす=日。  訳して大日如来。

智慧の光が日の光を凌ぎ、宇宙の隅々まで照らす。太陽が全ての成長を促す様に大日如来の智慧と光は全てのものに宿り善い種を育てる。  

 

 

【阿字観の目的】

阿字観は梵字アの一文字から自身の命を宿すこの大宇宙、自然界と呼吸を通わせ、心を通わせることで、全ての根源、宇宙の真理の象徴である大日如来と自分自身が一体化し、自身の心に宿る仏と向き合うことを目的とします。如実(にょじつ)()自心(じしん)

結果、自身の心の仏を観じ安心(あんじん)を得る事で心の安定をはかること

 

◎心地良くなること。気持ち良くなる。リラックス、集中力を促進、癒しが目的 辛抱するものではない。 

如実(にょじつ)()自心(じしん) この世の命には全て仏様が宿り自身の心中にも仏様が宿る事を知る。

 

法を感じる。法=仏さまの智慧

雑念、想念は受け入れる(受容) 自分を内面から静かに観察する  

呼吸に意識を集中させ自らが良いイメージを湧かせて心の中に良いものでいっぱいにする。想い(thinking)にとらわれない

 

・弘法大師は説く

【人間の心の中には良いものも悪いものもあるが、良いもので一杯にしてしまえば悪いものの出る幕がなくなる】

 

 

調(ちょう)(しん) 調(ちょう)(そく) 調(ちょう)(しん)

調(ちょう)(しん) 体を調える方法 (座り方、姿勢、手の組み方)

調(ちょう)(そく) 呼吸を調える方法 浄化呼吸法の仕方  吐く→吸う 自立神経に作用

調(ちょう)(しん) 心を調える 体勢と呼吸が整えば自ずと心も調い落ち着く

 

 

*調身 半跏座(はんかざ)結跏趺座(けっかふざ)で座る。但し初めは楽な姿勢イスを使用しても良い長時間苦痛を伴わず保てる姿勢。

手は法界(ほうかい)定印(じょういん)の印を結ぶ。左掌を上に向けその上に右掌を上に向けて重ね、両親指の先を軽く着ける

目は半眼若しくは目も閉じても良い。指導員のもと指示に従う。

身体の重心を安定させる。左右、前後に振り子の如く揺すり中心をはかる。

肩の力抜き背筋を伸ばす 

調(ちょう)(そく) 呼吸を調える方法 浄化呼吸法の仕方 自立神経に作用 

     呼吸の流れ 吐く→吸う 数回深い呼吸をする

吐く→副交感神経の作用 弛緩、緩和状態リラックス

吸う→交感神経の作用 緊張 

・口から吐いた息が目の前の自然界、大宇宙に広がりその息は大宇宙の清浄なる空気となり鼻より体内に入る

・吐く息吸う息に意識を集中させる事が大事

 

*調心  観念 調身、調息が整えば心か整う

 

◎清浄体操(ヨーガ体操)身体をほぐすことで心をリラックスさせる 調身、調息に効果がある 口伝

 

◎ヨーガ サンスクリット語yogaの音写 仏教=瑜伽ゆが 「相応 和合、結びつくこと、繋がる」 

呼吸法などにより心身の統一をはかる修行法。現在では呼吸法などで心と体を結びつけ心身のあらゆる健康法が確立される。

 

 

 

★阿字観の実修方法 

大きく分類して四段階

①数息観(すうそくかん)②阿息観(あそくかん)③月輪観(がちりんかん)④阿字観(あじかん)

 

 

 

 

 

①から順番にステップアップして行く

 ・①数息観 (すうそくかん)

深い呼吸を意識する観法    

・②阿息観(あそくかん)

阿(ア)の息、声を観じる。声を出すことで息の通り道(響き)を確認しながら行う呼吸法。吐く息、吸う息にひたすら命の根源である阿の声を唱えて阿の天地と呼吸を通わせ阿の声と一つになって宇宙の大生命を感得する瞑想法

・③月輪観(がちりんかん)

満月を思い浮かべ、そのイメージを変化させていき無限大に拡大した自身の心を感じる瞑想法

・④阿字観(あじかん) 

阿息観、月輪観をもとに阿を仏様と観じ、また自分の心を観じる瞑想法如実にょじつ自心じしん

 

★実修例

その1、体操→礼拝(五体投地(ごたいとうち))→着座→調(ちょう)(しん)→般若心経一巻→調(ちょう)(そく)

→数息観(約15分)(合計約30分)

その2、体操→礼拝(五体投地(ごたいとうち))→着座→調(ちょう)(しん)→般若心経一巻→調(ちょう)(そく)

→阿息観(約15分)(合計約30分)

その3、体操→礼拝(五体投地(ごたいとうち))→着座→調(ちょう)(しん)→般若心経一巻→調(ちょう)(そく)

→阿息観(約10分)→月輪観(約10分)(合計約40分)

その4、体操→礼拝(五体投地(ごたいとうち))→着座→調(ちょう)(しん)→般若心経一巻→調(ちょう)(そく)

→阿息観(約10分)→月輪観(約10分)→阿字観(約10分)

(合計約50分)

 

瞑想の準備  ・トイレを済ます  ・装飾品、アクセサリー、腕時計、メガネ等を外す 

       ・服装は身体を締め付けない軽装 特に腹部の締め付けが強いものは避ける 

  ・直前の食事は避ける ・タオル用意